南米を含めた海外邦字紙の苦闘を伝える記事を朝日新聞が掲載。その内容に加え大きな誤りがあり、ブラジルの邦字紙で編集提携を結ぶニッケイ新聞が抗議の声を上げた。今月始めにあった一連のやり取りは、同紙ウェブサイト上の記事でも明らかにされている。
朝日新聞の記事は1日付、日本語読者の減少を含め、邦字新聞社の縮小と苦境を伝え、一方で新しい海外邦字紙の形を紹介している。これまでコミュニティーに根ざしてきた新聞社の老体化と新たに出てきたメディアの対比ともいえる。
問題は大きく記された見出しで、一部は8日付で訂正された。知識不足か無意識かは別として、移民が伸びず、日本語を第一言語とする人口が減れば、それが日系人口にも比例するという安易な見方を想起してしまうものだった。
ニッケイ新聞は朝日新聞から「助けるつもりだった」という旨の返信をもらったというが、邦字紙の苦境ぶりを伝える記事内容、ネガティブな見出しの横に紙面ロゴの見える紙面写真から、「何が好転するのか」という憤りの声があがる。ニッケイ新聞側の大きな不信感は、朝日新聞とのやり取りを伝える内容からも伝わってくる。
記事には海外邦字紙のリストに北米の1紙として本紙も含まれていた。同様にサンフランシスコの邦字新聞2社が2009年に相次いで廃刊したことも伝えている。「日系世代の交代を前に抱える悩みは共通」ともあった。
だが各国、各都市の日系社会の歴史、背景、文化はそれぞれ異なる。長い歴史、世代を持つ日系人は、すでに「日系」の枠組みを作るも難しい時代となっている。北米における国勢調査でも人口数は伸びているなか、各々の特徴とアイデンティティーをいかした発刊が、生き残る邦字紙では続けられている。
(佐々木 志峰)