本紙で紹介している寿司カシバに先日、写真撮影で足を運んだ。開店前の準備段階、あわただしいなかにも料理人、サーバーを含め、知人が何人かいた。人気、価格と敷居の高いレストランながら親しみを覚えつつ、新しいレストランとしての形も垣間見ることができた。
パートナーの1人で、入り口でドアマンを務める高橋進さんは、店前に列を作る客、店に入る客と、これからレストランという空間を真に楽しめるような気遣いをする。席を立ち、退店する客も同様で、最後まで気分良く過ごせるよう、また多少でも気分を害した場合、ドアから出る際に少しでも解消できるような「おもてなし」の心を提供する。
月に2度、お通しが変わる前、サーバーへの試食の時間がある。味、材料、すべてを理解し、客に説明できるようにするのだという。日本食や文化の深さを学ぶ機会として、従業員にとって楽しみな時間というが、「学びの時間」の表情は真剣そのものだった。
テクノロジーを含め、デジタル、モバイルの影響で、生活、住居環境は大きく変わった。レストランの形態も大きく変わっているのだろう。簡単、気軽に食せるデリ風、あるいは家庭風の店と、料理を含め空間と経験を楽しんでもらう高級店。今後、二極化はさらに強まるのかもしれないが、いずれにしても鍵となるのは、清潔さを含め、サービスの部分かもしれない。
本紙英語面では、2週間に1度、宇和島屋シアトル店の試食デモのレシピを紹介している。試食デモは長く続けられており、販促もあるが、家庭での料理の機会を増やしたいとの考えがあるという。
テレビの料理番組のみならず、ネットで一般レシピ、アイデア料理を普通に見ることができる時代だ。ある程度のレベルであれば、あらゆる料理を自宅で作ることができ、「この味」を食べるため、レストランである必要はなくなった。レストランというビジネス自体も以前と同じようにはいかない時代で、料理、食事面だけでなく、様々な部分で工夫しなければならないのだろう。
インターナショナル・ディストリクトにも新たな風が入り、新店舗を目にする。地域の風土や文化に合わせたビジネスとして注視したい。
(佐々木 志峰)
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レストランの形
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